『文明化の経験』

安丸良夫『文明化の経験』(岩波書店、2007)
おすすめ。

(1)数年前のことになるが、上智大学歴史学研究会が小さなセミナーを開いた。中村政則さんが「言語論的転回」について報告したこのセミナーでは、ぼくもコメンテーターとして末席を汚した。「最後の講座派」と呼ばれていた中村さんの柔軟な思考に驚かされたり、そしてなによりも安丸さんにはじめて(そして、今のところ唯一)お会いする機会を得たことで、このセミナーはぼくの記憶の深いところに刻まれている。

なにしろぼくは大学院生時代に『日本の近代化と民衆思想』(青木書店)を読んで「通俗道徳」論にふかく納得して以来の、かなり熱心な安丸ファンなのだ。

(2)そんな安丸さんの新著は、公共圏・国民国家コスモロジーなどをキーワードに、民衆運動と世界システムを結びつけることによって、幕末から明治期の歴史を総体的に、かつ実証的に理解しようとする書である。一読してその所説をすべて理解したとはとてもいえないが、柴田三千雄『近代世界と民衆運動』(岩波書店)と比較しながら読むべき、壮大なスケールの所説である、ということだけはわかった。

うーむ、やはり安丸さんの仕事は面白い。