『ラオス少数民族の教育問題』

乾美紀『ラオス少数民族の教育問題』(明石書店、2004)

(1)《アジア経済研究》関連読書その3は、ラオス少数民族であるモン族を対象に、彼らの教育水準の低さの原因を探り、処方箋を提示しようとする書。モン族の教育問題の原因として

  • 居住地・インフラストラクチャー要因
  • 貧困に伴う家庭要因
  • カリキュラム編成上の問題(多数民族中心主義的なカリキュラム)

という3つの仮説を提示し、インタビューや統計分析によって第3仮説が正しいことを証明する。そのうえで、多文化主義的なカリキュラムを導入することによって問題を解決するべきことを提唱する。

(2)この提唱自体はまっとうな処方箋だと思うが、問題は第2仮説を棄却する手続きにある。「モン族の教育水準の低さを惹起しているのは家庭の貧困である」という第2仮説を棄却する根拠として提示されているのは、大略

  • モン族に対するインタビューによれば、豊かになってもカリキュラムに関心がもてなければ学校には行かないそうだから、貧困が問題ではない
  • 経済統計を分析すると、モン族が多く住んでいるシェンクワン県(本書のフィールド)は比較的豊かであるから、貧困が問題ではない

というものだ。しかし

  • 前者については、「彼らには、カリキュラムに関心がもてれば、豊かでなくても、学校に行く意思がある」ということを証明することが必要ではないか?
  • 後者については、諸民族の平均で議論するのではなく、民族間の経済格差を考慮することが必要ではないか?

という手続き的な疑問が残る……のは、わたしが素人だからです、ハイ。

でも、これだと、第2仮説を十分コントロールしないまま第3仮説だけを支持しているということにはならないだろうか?

(3)そういえば、かつてフランスで「ラオス人ですか?」と聞かれてのけぞったことがあったが、考えてみればラオスは旧フランス領だったんですね。