『官邸崩壊』

上杉隆『官邸崩壊』(新潮社、2007)

(1)ほんの1週間フランスの田舎をまわっているあいだに安倍前首相が辞意を表明したため、帰国したときは、なにがなんだかまったく事情が飲みこめない浦島太郎状態だった。そんなわけで、ここしばらく、本当に久しぶりに『週刊朝日』といった手合いの週刊誌を買っては、日本政治の深層の真相(掛詞)に迫るべく、知識のリハビリテーションに励んでいる。

(2)その一環として、いま話題のこの本を読み、頭をかかえる。大統領の暴走的右傾化、独走する大統領の陰にかくれてヒマな首相の悲哀、幹部の一本釣りが続く社会党の迷走、消滅寸前の共産党の思考停止状態……といったフランス政治のドタバタぶりを笑えないな、これじゃ。

(3)そんなこんなしているうちに、とうとう授業が始まってしまった……が、懸案の書類の下書きが終わったので、気分はスッキリ。さて、それにしても、色々と本腰を入れねばなるまい。

【追記】
1991年から翌年にかけてぼくのレンヌ滞在を受入れてくれたミシェル・ドニ(Michel Denis、レンヌ第2大学名誉教授、レンヌ政治学研究所元所長)が亡くなったという知らせが、先ほど届いた。日本ではほとんど無名の歴史学者だった彼であるが、その博士論文『マイエンヌの王党派と近代世界』(1977)たるや、まったく未整理だったマイエンヌ県文書館の分類系列Mに属する膨大な資料を《すべて》読んだという恐るべき作業の産物であり、またフランス革命以後の保守派にかんする研究の先鞭をつけたという意味でパイオニア的な業績だった。さらに(フランス滞在経験者ならばわかると思うが)非効率的で気まぐれなフランス官僚機構に翻弄されるフランス到着直後のぼくらに、さまざまなサポートを惜しまなかった人物でもあった。記して冥福を祈りたい。