『ヴェーバー社会理論のダイナミクス』

松井克浩『ヴェーバー社会理論のダイナミクス』(未来社、2007)
おすすめ。

(1)一見、版型も小さいし、学術的で地味な一冊である。まぁもとが博士論文なのだから、それも当然だろう。ところがその実は、

  • 「自立した個人を称揚するノー天気な近代主義者」と、「システム社会化の果ての《鉄の檻》の到来を予言した悲観論者にして、それに対抗するために《戦士》を待望したマッチョな英雄主義者」という、既存の2つのマックス・ヴェーバー像をともに退け、
  • 彼のアーギュメントを「英雄的でもないがたんなる歯車でもない、それぞれが小さなプライドを抱えて生きる個人と彼らが織りなす社会の理論」(266頁)として捉えるべきことを主張し、
  • その先に「運命に抗って道を切り開くような《強い個人》の復活に期待するのではなく、普通の個人の日々の営みの中に《鉄の檻》を動態化していく契機を探る試み」(259頁)を展望する、

という、じつに論争的な書である。まこと人は見かけによらないもんだ……って、人じゃなくて本なんですけど。

(2)前にちょっとヴェーバーの科学方法論をかじったとき、大略「ああ、この人は第3の道を切りひらく人なんだ」という感想をもったことがある。この本を読むと、彼が、主観的意味と客観的意味を「えいっ」と重ねあわせることによって、まったく新しい《第3の》パースペクティヴを獲得してゆく様が、よくわかることだろう。