『レイシズムの変貌』

ミシェル・ヴィヴィオルカ『レイシズムの変貌』(森千香子訳、明石書店、2007、原著1998)

(1)我が家で局地的に流行していた感染性胃腸炎は、今度はぼくに回ってきた……どうにか復活したが、それにしても、30時間絶食したあとの白米はなんと美味しいものであったことか。
そんなこんなで空腹でフラフラしつつ、フランスを代表する社会学ヴィヴィオルカの著書がようやく邦訳されたので一読。レイシズム(フランス語でracisme)つまり人種主義のコンパクトな入門書だが、「劣等化vs.差異化」と「人種vs.文化」という2つの対立軸をもちいて人種主義の諸類型を整理し、そのうえで、1970年代に入って人種主義の主流が「劣等化&人種」型から「差異化&文化」型に変容しつつあると指摘して、じつに見事な手並みをみせている。
この指摘は、多文化主義や文化多元主義を唱道するだけでは、新しい型のレイシズムには対抗できないことを示唆していて、重い。

(2)フランス研究で碌を食むものとしては

たしかに、フランス在住の黒人数を割り出したり、フランス黒人団体代表者会議が行ったように、サンプリングしたフランス人に対して、自分が黒人というカテゴリーに属しているか、また六ヶ月以内に差別を受けた経験があるかを自己申告方式で調査したりすれば、黒人固有の問題や要求が主張できるという利点が生まれる。だがその代償として、社会の人種化傾向が強まり、レイシズムが新たに発生する恐れも生まれている(7頁)

という指摘が興味深い。これって、じつにフランス的な発想だよね。