『EU経済統合の地域的次元』

若森章孝他『EU経済統合の地域的次元』(日本経済評論社、2007)

■ヨーロッパにおける国境をまたいだ地域間の協力システム「クロスボーダー協力CBC」の現状をリサーチした共同研究の成果。各地で進んでいるCBCの実態、成果、問題点、展望をめぐる記述が淡々と続くが、読みようによってはじつに興味深い報告書である。
こちらでも簡単に紹介されていたが、このCBC、いまだに「地方分権の本丸は暫定税率のとりあつかいで……」みたいな十年一日のごとき議論が続いている某国では想像もつかないたぐいの政策展開である。なにせ国境をこえて通勤する人々が出てくれば、社会保険料をだれがどこに払うか、からはじまって、思いもよらない問題がとびだしてくるわけだ。もちろんCBCがすべてうまくいっているわけではないが、それでも「実験」は「実験」というだけで興味深いのである。
■最近ヨーロピアン・スタディーズは下火らしいが、こういう面白い実験を紹介する文献をみると、まだまだやるべき/やれることはあるんだなあと痛感させられて興味深い。そうすると、問題は「いかにパッケージするか」なんだろうか。
■この本が進化経済学会を土台とする共同研究の成果であることがまた興味深い。最初は「なんでこんな人が……」と思うようなその筋の大家が寄稿していて、かるく面食らったが、あとがきを読んで「なーるほど」。進化経済学会、やるじゃん。