『ハロッドの思想と動態経済学』

中村隆之『ハロッドの思想と動態経済学』(日本評論社、2008)
おすすめ。
■自宅の新築と職場の耐震改築工事が重なったため、むこう一年間で4回の引越し(自宅-->仮住まい、研究室-->仮研究室、仮住まい-->自宅、仮研究室-->研究室)が予定されているという、悪夢のような一年となってしまった。その第一弾が日曜日にあり、疲労困憊……トシだよね、トシ、とボヤきつつ、いわゆる「ハロッド=ドーマー・モデル」を提示した今日的経済成長理論の祖ロイ・ハロッドを、生涯、思想(経験論哲学、功利主義)、経済理論など、さまざまな側面から分析した書をよむ。
■ハロッドって、ソロー=スワン・モデルによって(いわば)否定された古めかしいモデルの構築者でしょ、みたいなあさはかな認識しかなかったが、そんな彼がじつは

  • 資本主義システムにおいては、セイ法則なんて成立しないんだよ〜ん。
  • 経済学の目的は人間社会の進歩のみちをさし示すことであり、そのためには経済学は「動学」でなければならない。そして、経済学を動学化するには「異時点間をつなげること」ではなく「一時点で生じている不均衡から変化にアプローチすべき」だから、サミュエルソンはダメダメ。
  • 効用の個人間比較可能性を否定するロビンズなんて、単に逃げているだけじゃん。
  • 帰納法は証明できる。ついでに、サンプルの偏りなんて気にする必要なし。わっはっは、ヒューム敗れたり。

etc.、etc.、という、とんでもなくラディカルでソリッドなアーギュメントを展開した人物だったとは……参りました。