『記憶の中のファシズム』

剣持久木『記憶の中のファシズム』(講談社講談社選書メチエ、2008)
【追記・剣持さん、書きわすれてすみません】いただきもの。

■1980年代後半から90年代はじめにかけてパリにいた、とりわけ人文社会科学専攻の日本人留学生で、剣持さんの名前を知らないものは少ないだろう。さらにいえば、彼の世話にならなかったものは、けっして多くはないはずである。かくいうぼくも、1989年末、日本館Maison du Japonの図書室ではじめてお会いして即(なぜか)焼肉を食べに伝説のレストラン「韓林」に連れていってもらって以来、いくどとなく日本館の彼の部屋を訪れてはフランス生活に関するさまざまな知識を授けてもらうことになった。どれもこれも、ひたすらに懐かしい思い出である。
■そんな剣持さんの第一作は、しばしば「フランス・ファシズムの巨魁」と評価されている「火の十字架団」指導者フランソワ・ド・ラロック中佐の生涯をたどり、このイメージがいかに「つくられた」ものであるかを明らかにしたモノグラフ。フランス国立文書館およびパリ政治学院に寄託されたラロック個人文書の特別閲覧derogationにもとづく書下ろしの好著である。
第4章で描き出される、ラロックの家族たちが戦後一貫して彼の名誉回復のために闘ってきた歴史には、胸につまされる思いがする。