『歴史への問い/現在への問い』

大門正克『歴史への問い/現在への問い』(校倉書房、2008)
いただきもの。
おすすめ。

■著名な日本経済史学者・大門さんは、あまり知られていないかもしれないが、もっともすぐれた歴史関係の論客のひとりでもある。ぼくは、彼のアーギュメントを読むたびに、納得したり首をひねったりしながら、いろいろなことを考えさせられてきた。そんな大門さんの評論集が届いたので、ようやく時差ボケがとれてきたこともあり、一気に読みきる。
■大門さんによれば、

  • 一世を風靡した【国民国家論】は、近年の【新自由主義】のはらむ問題点を指摘し、いわゆる【新自由主義史観】に対抗するには、無力である。
  • それは、国民国家論が、歴史の主体のとらえかたとして【方法論的個人主義】を採用しているからである。
  • むしろ、歴史の主体は、【複数の相矛盾するアイデンティティ】の保持者として、【地域あるいは現場】の次元における【経験】という側面から把握されるべきである。

方法論的個人主義の評価については異論もあるが、たとえば経験への着目は、エドワード・トムソン(イギリス文化的マルクス主義歴史学)やベルナール・ルプティ(アナール学派第4世代)にも共有されていたことからもわかるとおり、重要な指摘である。
とにもかくにも、大門さんのねばりづよい思考のあとをたどる悦楽の時間をすごすことができた。