『アルザスと国民国家』

中本真生子『アルザス国民国家』(晃洋書房、2008)
■「国民国家の矛盾を体現する場」(24頁)アルザスを舞台に、かの地で普仏戦争から第二次世界大戦にいたる時期を生きた人びとの日常生活の視点から国家、民族、ナショナリティ、あるいはナショナリズムといった現象を捉えようとする一冊。
■この本は、いわゆる「下からの歴史」というアプローチを採用しているといってよいだろう。そして、この本には、同アプローチがもつ強みと弱みがはっきりとみてとれる。すなわち

  • 【『最後の授業』の「フランス万歳」には感動した】とか【アルザス語ってドイツ語の方言でしょ】みたいな単純な理解を批判できるという強み
  • 【言語を重視するドイツ型国民形成vs.意志を重視するフランス型国民形成】とか【対独復讐を叫ぶフランス右翼vs.植民地獲得を重視するフランス左翼】といった、この本でも肯定的に言及されている枠組が、分析にあたって有効に利用されていない、という弱み

である。