『戦前・戦時日本の経済思想とナチズム』

柳沢治『戦前・戦時日本の経済思想とナチズム』(岩波書店、2008)
■第2次世界大戦全から戦中にかけての日本の社会政治経済システムを、なんと呼んでも「いまいち」感がぬぐえないが、とりあえず「日本型ファシズム」とよぶことにしよう。
これまで日本型ファシズムは、
(1)その独自性が強調されるか、または
(2)ドイツ、イタリア、あるいはソ連アメリカ合衆国の社会政治経済システムと比較対照される。
というかたちで論じられてきた。しかし、それらにもまして重要なのは
(3)先行する諸ファシズム、とりわけドイツ・ナチズムの経験を、当時の日本の政治家・官僚・財界人・知識人がいかに理解し、影響され、利用し、あるいはアプロプリエイトしたか。
という点である……という視角から、ドイツ経済史学の大家・柳沢さんが、ナチズムの【受容】のありかたを分析した書。
■およそ本筋からはずれるかもしれないが、この本からたちのぼってくるのは、日本型ファシズムなるおよそ奇妙奇天烈融通無碍笑止千万複雑怪奇な対象に肉薄するべく全知全能を賭けて悪戦苦闘した、当時の(少なくとも「批判的な」)知識人の姿である。彼らの所説は当時の状況におきなおして理解されなければならないという柳沢さんの発言は、おもいというべきだろう。