フランス滞在6日目

2月6日(金)
数日前に紹介したとおり、フランスでは大学改革「ペクレス改革」が進行している。それに反対し、抗議する動きも活発で、昨日は教員と学生のスト&デモが各地で(もちろんレンヌでも)なされた。その効き目もあって、11日には高等教育担当大臣ヴァレリー・ペクレスと大学関係者の交渉がおこなわれる。ちなみにこの日はレンヌ第2大学UHBでぼくのセミナーがあるのだが、スト&デモ好きで知られるUHBだけに、ペクレスにプレッシャーをかけるといった理由で突発的なストが発生して、そのせいでセミナーが中止にならないか、ワクワクして……じゃなくて心配している。ちなみに前日である10日にも、デモ&ストが予定されている。いやぁ本当にステキな国だ、フランスは。
さて、ペクレス改革に反対する声明&署名サイトを紹介するメールが、ジャンから回ってきた。フランス語や英語をはじめとする多国語で、声明が掲載されている。もうすぐ声明の日本語訳版も掲載されるはずだが、翻訳にちょっと(おしかけ的に、だが)協力したので、とりあえず拙試訳を掲載しておきたい。今日の夕方は、レジダンスの自室でシコシコとこの翻訳をしていたのだった。なお日本語訳の最終版は修正される可能性があるので、関心をおもちの向きは、おって上記サイトで確認してほしい。

「すべての大学関係者に対する国際アピール」

2009年2月4日(水)

ピエール・クレペル、ティエリ・デュモン、ジェローム・ジェルモニ(フランス、リヨン第1大学カミーユジョルダン研究所)

フランスの大学は無期限のストライキに入った。

フランスは、高等教育および研究について、独立と自由と敬意を享受する高水準の公共サービスをもっていた。政府は、ここほんの数ヶ月で、乱暴なかたちで、しかもなんの相談もなく、この公共サービスを破壊し、不安定性と恣意性が支配する一種の知識マーケットに変質させることを決定した。

  • 教育と研究を担当する教員は安定的な身分を失い、授業時間数は「クライアントの数による」ことになる。
  • 常勤教員のポストは劇的に減らされ、その分は、独立性をもたず不安定な非常勤教員でうめあわされることになる。
  • 博士候補生は、最初の6ヶ月は理由なくキックアウトされうることになるだろう。また、みずからの了解なく、なんの権利もないままに、企業のために働くことになるだろう。
  • 初等教育教員の養成は「略奪にあう」ことになる。
  • 大学は「自治」を与えられると称されているが、実際には、なによりもまず競争にさらされるだろう。他方で、大学に対する国家のコントロールが強化され、それに従属することになるだろう。十分な予算が与えられないがゆえに、当然のなりゆきとして、おいおい、授業料が徴収されざるをえなくなるだろう。また、地元財界に対して、大学は膝を屈せざるをえなくなるだろう。
  • フランス国立科学研究センターは廃止され、テクノクラートが支配する資源分配機関に変質することになる。
  • 研究者は、不適切で、ばかげており、すべての学会から拒否された「定量的」なる基準にもとづいて評価されることになる。

わたしたち各国の大学関係者および研究者は、ここに、世界各地でおしつけられてきた(そして今日もおしつけられようとしている)官僚主義的で金銭至上主義的で危険な手段をみいだす。

以上の理由から、わたしたちはフランスの大学関係者に連帯する。『百科全書』とボルテールとルソーと「人権宣言」をうんだ国において、教育と研究が一種の商売に帰せしめられ、諸々の権力の恣意に左右されることになるとすれば、そこで脅かされるのは世界全体の自由である。

諸々の勢力が、力をあわせつつ、この新たな状況を強いている。わたしたちの価値を守るには、わたしたちもこれまで以上に、そして彼ら以上に団結しなければならない。それゆえ、わたしたちは、大学関係者たちに対して、これら脱線が普遍的なものになりつつある事態に直面する今日、政治的、哲学的、あるいは宗教的な立場のちがいをこえて団結することを訴える。このような脱線を許容した人文主義的知識人など、これまで、ひとりも存在しなかったからである。

うーむ、やはりペクレス改革は、かなりの部分、かの日出ずる国で数年前におこった事態(たしか「法人化」とかいったような…)とよく似ている気がする……が、これが単なる「気のせい」であればよいのだが。