フランス大統領選挙・第二次投票



フランス大統領選挙第二次投票は、当初の予想どおりフランソワ・オランド社会党、左翼)が現職ニコラ・サルコジ(民衆運動連合、右翼)を破った。得票率は大体52%対48%だったので、予想では6から10ポイント差でオランド勝利だったことを考えると、これは「サルコジ健闘」の部類に入るのではないだろうか。
それにしても、第一次投票では右翼+極右で47%と、左翼+極左(43%)に優越していたのに、どうしてこうなっちゃったのか。
これもサルコジの不人気のなせる業だろうか。
それもあるだろうが、それだけではない。重要なのは、フランス政界の勢力配置である。極右から極左までは、一次元に「極右、右翼、中道、左翼、極左」と並んでいるわけではない。近年の勢力配置は二次元で考える必要がある、というのがぼくの感想である。
Cf.なお、これはとくに新しいアイディアというわけではない。かの舛添要一さんも、かつてフランス政治研究者だったころの著書『赤いバラは咲いたか』(弘文堂、1983)で、1980年代のフランス政界の勢力配置を(座標軸は異なるが)二次元で説明していた記憶がある。
さて横軸に「経済的自由主義に対するスタンス」、縦軸に「政治社会的自由主義に対するスタンス」を取ってみよう。「経済的自由主義オッケー」を(最近は聞かない言葉だが)「ネオリベ」とし、「ダメ、ゼッタイ」つまり市場に対する国家介入を求めるスタンスを「反ネオリベ」とする。つぎに「政治社会的自由主義キライ」つまり異質な他者の排除(=反移民)と均質なメンバーからなる共同体の構築(=反欧州統合)を求めるスタンスを(これは言葉の使い方まちがってる気がするが、とりあえず)「ネオコン」とし、「そりゃ大切」つまり寛容と欧州統合推進を求めるスタンスを「反ネオコン」とする。

これを座標軸上に図示すると、冒頭の脱力系「お絵かき」になる。これが知命を前にした大人の作品かと思うとなんともいえない気がするが、それは措いておきませう。
サルコジは、支持を拡大しようとすれば、極右に接近するか中道に接近するかしかないが、しかし両者は対称的な位置にあるから、あちら立てればこちら立たずとなる。このディレンマのなかで、サルコジは極右票とりこみを選択して「反ネオリベネオコン」象限に接近したが、その結果として、相対立する「ネオリベ、反ネオコン」象限に位置する中道の離反を招いた。実際バイルは、中道史上はじめて社会党支持を明言してしまった。
これに対してオランドは、極左と同じ「反ネオリベ、反ネオコン」象限にあるので、極左票を取りこぼす心配はない。事実メランションは、第一次投票後、ただちにオランド支持を明言した。だから、あとは極右と中道の一部から得票するべく、テキトーサルコジを批判していればよかったのである。
サルコジに勝機があるとしたら、それは、極左支持層を「反ネオリベ、反ネオコン」象限から「反ネオリベネオコン」象限に移動させるようなテーマを発見できたときである。実は彼も、とりわけ第一次投票後はこの課題に気づいていた節があるが、その声は、時間的制約もあり、十分には届かなかった。


今後、オランド政権は、おそらくは「反ネオリベ」の色彩を弱め、中道に接近してゆくだろう。つまり「中間、反ネオコン」というスタンスである。根拠は以下の如し。

  • 非エリート(エリート養成校・国立行政学院の予備校的性格をもつパリ政治学院を中退)だったサルコジに対して、オランドはバリバリのエリート(国立行政学院を7番で卒業)であり、どうみても民衆層から遠い。
  • オランドは、欧州統合の立役者の一人ジャック・ドロールの愛弟子でもある。

そして、この「中間、反ネオコン」というスタンスは、ドイツ・メルケル現政権のそれと重なりあう。巷間で言われる「知ったかぶり」コメントと異なり、独仏枢軸は揺らがないだろう、と、ぼくは(これまた「知ったかぶり」ではあるが)予想している・・・もちろんこの路線が経済危機を克服しうるか否かは、これはまた別の話。


ま、個人的にはサルコジきらいだったので、Adieu, Sarko(政界引退という噂)。