良いクリスマス・年末・新年を!!

ソウルから戻って1か月、JSPSで学振特別研究員の面接審査に陪席したり、東京都歴史研究会(世界史担当の高校の先生方の集まり)でグローバル・ヒストリーについてしゃべったり、京都大学で開催された第1回「日韓西洋史フォーラム」に参加したりしているうちに、早くも街はクリスマス・年末・新年の雰囲気である。ぼくも先週末に悪天候の東京でJASSOとJSPSの会議をかけもちして、どうにかイッツ・オーバーとあいなった。年内の債務は『詳説世界史研究』(山川出版社)なる参考書のコラム案を考えるだけとなり、気分は「ちょっと一服」である。


(1)特別研究員(通称「特研」)の面接審査は、いまや特研ポストをゲットできるか否かはアカデミック・キャリア・パスにおいて極めて重要な分岐点をなしているだけに、応募者諸氏の緊張が伝わってきて、こちらまで緊張してしまったのか、どっと疲れた。陪席するだけなのでこうして明言できる(審査員には守秘義務が課されている)わけだが、陪席ゆえ「一言もしゃべってはならない」というのも、それはそれで結構大変ではある。


(2)都歴研のトークは、今回の高校世界史教科書改訂に際して登場してきた「グローバル・ヒストリー」的な記述をいかに理解するかという問題設定から、史学史について「ナショナル・ヒストリー==>ポスト・コロニアル・ヒストリー==>グローバル・ヒストリー」というストーリーを設定したうえで、18/19世紀転換期の解釈を具体的なケースとして、三者の異同とその含意を論じてみた。うまくいったか否かは「?」だが、ぼくは楽しかったので、良い機会を与えていただいて感謝の一言である。
しかも、なんと高校・大学の後輩で、現在は都立高校で教えている赤堀太郎さんに30年ぶりに再会するというオマケつき。赤堀さんのムチャクチャな(もちろんほめ言葉)授業実践記録を頂き、帰りの新幹線の車中で読んで「こ、こ、これはスゴイ」と感服。ここまで生徒主導型の授業ができるとは……どんなラポール構築を試みているのだろうか。


(3)日韓歴史フォーラムでは、韓国からLim Jie-Hyunさんはじめ5人の研究者がやってきて、日本側の6人(&あのような野蛮な場に蛮勇をふるって参加してくれた京都大学の大学院生1名、アンタは偉い!!)と、日韓の西洋史学史の異同について熱く(ホントに)語りあった。先日ソウルで会ったJin-Binさんに早くも再会し、やっぱり日韓は近いのである。
ソウルでわかっていたことだが、やはり日韓では「社会史学」の意味と位置づけがおおきく異なっている。韓国では、「社会史学」は、ホブズボーム・トムソン・HWM(History Workshop Movement)に代表されるイギリス労働史学の影響を色濃く受けたトレンドとして在った。そして、この「社会史学」に対する次世代の異議申立運動として、今日の文化史学やグローバル・ヒストリーが存在する。これに対して、日本の「社会史学」は文化人類学的な「アナール学派」第3世代と流れを共にし、しかも世代交代運動としての「社会運動史」運動のあとに、かつ担い手の世代からすると「時計の針を巻き戻す」ものとして出現した。二宮宏之のしごとを「社会史学」の代表的業績として紹介した長谷川まゆ帆さんのトークに対して韓国側から「それは文化史学ではないのか?」という疑問が呈されたことは、このような両国の差異を明るみに出すものだった。この差異の背景にあるものは何か……やはり歴史学は面白い。
終わって京大御用達の居酒屋「平わ」で大宴会となり、Limさんからは今後の企画について次から次へとアイディアが飛び出した。この辺が韓国歴史学界稀代のトリックスターたるLimさんの本領なのだろう。そのパワーに圧倒されつつ、百万遍の夜は更けてゆくのであった。


新年は、1月9日の「北海道ハイレベル学習セミナー」のトークから始まる。このセミナーは、豪雪の深川(今日の時点で積雪48センチ……)に全道の高校1年生100人を集め、3泊4日の合宿形式で進められる、高校教師によるハイレベル授業あり、大学教師による模擬講義あり、大学の紹介あり、大学生による座談会ありという、北海道教育庁渾身の一大イベント企画。ちなみに基調講演は「今でしょ」の林修さん。雪も含め、今から楽しみである。
それでは、どうぞ良いクリスマス・年末・新年を!!