フランス便り

1月24日から3週間の予定でフランスに来ている……が、はやくも明日は帰国の日と相成った。例によってモンペリエを根城に、あちらこちらを飛び歩く日々。ただし、自分のリサーチのテーマと違う課題を抱えていたので、ちょっと不慣れな感じをかかえながら時間が過ぎてしまった感じがする。
今回は、日本では人質殺害事件、フランスでは『シャルリ・エブド』襲撃に続く諸事件という、例のイスラム国(フランスでは「デーシュ」)の存在が色濃く影を落とすタイミングでフランスに出かけることとなった。たとえばモンペリエでも、到着してしばらくは、街の角々に外人部隊……白いケピ帽じゃなくてグリーンのベレーなのが残念だったが……の兵士が機関銃をかかえて警備しているという物々しい雰囲気で、さすがにピリピリ感があった。
ところがそれから3週間たって、この頃は外人部隊も姿をみなくなり、街も元の雰囲気、つまり日常生活を取り戻しつつある。


ちなみに、ぼくが一番感服したのは、モンペリエ市警察……フランスは、第二次世界大戦直後の日本と同様に、国家警察と市町村警察に分かれている……の本部の廊下に張られていた手作りのポスター。

Je suis Cible.

写真を撮り忘れたのが残念だが、直訳すると「わたしは標的だ」になる。これが、『シャルリ・エブド』襲撃事件以降人口に膾炙するようになったスローガン「Je suis Charlie(わたしはシャルリだ)」をもじったものであることは、だれの目にも一目瞭然だろう。
色々な意味で「よそ者」であるぼくが「Je suis Cible」などと口走ったら不謹慎のそしりを免れないだろうが、つい先日のニースにおける兵士襲撃未遂事件……犯人は「移民子弟==>ぐれる==>イスラム教過激主義に染まる==>シリアに行こうとしてトルコでつかまって送還される==>逆上して犯行に走る」というお約束パターン……をみればわかるとおり、フランスでは兵士や警察官はいつ襲撃されてもおかしくない状況にある。そんななかで「Je suis Cible.」なるポスターを作り、事態を笑い飛ばす豪気さは、素直にスゴイ。


フランスは、日本の一歩先を行っている。それは「モデル・フランス」として、ぼくらが真似るべき存在である、という意味ではない。いずれ日本が直面するだろう、あるいはすでに直面しつつある諸問題に、すでに直面し、解決しようとしてあがきつづけている「先達」である、という意味だ。
インターネットをチェックすると、日本でもデーシュがテロに走るんじゃないかとか、在外邦人の安否は大丈夫かとか、人質奪回に自衛隊を派遣せよ(ってホントに首相が言ったんですか? マジすか?)とか、色々と喧しいらしい。
でも、ぼくらは、日常生活を淡々と過ごすことの重要性と、ヒステリックになることなく事態を笑い飛ばすことの力を、フランスの経験から学べるんじゃなかろうか……などということを考える滞仏最後の夜。