春分の日に「体力」について考える。

どうにか無事に年度末を迎えた気がする。来週一回東京に出かければ、あとは仙台でオフ(もちろん学内行政を除く)である。フランスから帰国してから一ヶ月強、この間、二度ソウルに行き、その間は各種出稼ぎに出かけ、さらにその間の仙台滞在中は風邪を引いて寝ていたという、要約すれば「海外出張と出稼ぎと風邪の日々」ということになるだろうか。
知命を過ぎると、体力の低下について深刻に考えざるをえなくなる。ここでいう「体力」とは、身体的体力と、もうひとつ知的体力のことである。放っておくと、両者は有意に下がる。前者のキーワードは「メンドイ」であり、後者のキーワードは「守りに入る」である。
★★★
それじゃ、ぼくはどうか。
前者については、ぼくは、成人病対策……成人病「予防」じゃないところがお恥ずかしいのだが……としてプールに出かけるようにしているが、最近とみにメンドクなってきた。職場から徒歩15分だし、週二回&一回一時間程度というライトなものにすぎないが、なさけなくもメンドイのである。「メンドイ」対策としてはプレコミットメントが有効であるというゲーム理論の教え(ホントか?)に従い、半年分の会費を前払いしているが、それでもキツクなってきた。いかん、いかん。そんなわけで、今日こそは泳ごうと思いつつオフィスに来たところだが、気づいたら今日は祝日でプールは休み。ガックシ。
後者については、トシをとると「偉くなった」という錯覚に陥る機会が増えて「守りに入る」方向に流れやすくなる。これはマズイので、とりあえず、意識的に新しいことに挑戦することを心がけるようにした。この「意識的に」というところがトシのなせる業で、昔は無意識にいろいろ挑戦していたのだが、いまや腰が重くなり、意識しないと「守りに入る」化してしまってダメなのである。
と・こ・ろ・が。
新しいことをやらないと知的体力を維持できないが、新しいことをやるためには身体的体力が必要である。その一方で、身体的体力は低下傾向にある。かくして、知的体力を維持するべく新しいことに挑戦しようとすると、身体的体力がついてゆかず、布団滞在時間が延びるという事態に陥る。ぼくの「出張と出稼ぎと風邪の日々」は、このディレンマの産物であった。
★★★
しかし、泣き言を言ってばかりもいられない。
(1)研究のメイン・テーマを大きく変更した。これでは守りに「入らない」どころか、守りに「入れない」ではないか。なにしろ基本的な文献から読まないとわからないという「土地勘不足」である。いやあ、このトシになって大学入試レベルの教科書を読むハメになるとは思わなかった。しかし、来年6月までにフランス語で一本書けという依頼が来たので、悩んでいるひまはないのである。
(2)3月に終わる小山哲さん(京都大学)の科研プロジェクト「東アジアの西洋史学」に参加したおかげで知己を得たイム・ジヒョン(韓国、西江大学)からいろいろとお誘いが来るので、それらに乗ってみることにした。
まず今年8月末には、済南(中国)で国際歴史学会(International Congress of Historical Science)が開催されるが、ジヒョンが組織するイブニング・セッション「歴史と倫理」でコメンテータをやらんかといわれたので、済南がどこかすら知らないのに「答えは三択、〈はい〉か〈イエス〉か〈よろこんで〉」。国際歴史学会は5年に一度の世界歴史学界の一大イベントだが、そんな場でマティアス・ミデル(ドイツ、ライプチヒ大学)のトークにコメントするらしい。なんと知命を過ぎて人生初中国である。
さらに、欧州科学財団の研究プロジェクト「過去の表象」の成果であるステファン・バーガー編『国民を記述する』(パルグレーヴ・マクミラン、リンク先には8巻しか出てないが実際は全9巻)の刊行が完了したので、そのレビュー・シンポジウムが来年4月末に西江大学で開催されることになった。コーディネータはジヒョンと小山さん(ご苦労様の一言である)、バーガー(ドイツ、ボッフム大学)はじめ、クリス・ローレンツ(オランダ、アムステルダム自由大学)など各巻の編者をつとめた欧州歴史学界の大立者たちが集結するという、これまた大イベントになる。日韓からコメンテータが立つことになり、やらんかといわれたので、『国民を記述する』一冊も買ってないくせに「答えは三択、〈はい〉か〈イエス〉か〈よろこんで〉」。全9巻で10万円をこえるという大出費である。
ちなみにエブリバディ・ウェルカムなので、

参加したい人、いませんか?

(出来れば、ぼくの代わりにコメンテータとして)
(3)その他、大学内の別組織の教授を兼務するとか、放送大学の卒業研究を担当するとか、本の編集や翻訳監修をおこなうとか、5月の日本西洋史学会(富山大学)でシンポジウムのコメンテータをするとか、色々しごとがあるらしい……が、自分でも十分に把握できていない。おお、やはりトシだ。
★★★
かくのごとくして、知的体力において「守りに入る」事態を避ける体制は整った。残る問題は身体的体力である。4月からは各種の薬(とくに風邪薬)が手放せない日々になりそうだが、さて。