都市の「文化度」。

モンペリエに来て、はやくも一週間。今回はたった2週間の滞在なので、すでに半分が過ぎたということになる。諸般の事情(前述)でモンペリエ市文書館におけるリサーチが進まないので……あらかじめ目的を低く設定しておいたゆえに、当初の目的自体はクリアしているのだが……「なにをしているのか?」といわれそうだが、冬は各種講演会のハイシーズンなので、ほぼ毎晩(というのは大げさだが、3回ほど)各種の一般市民向け講演会に参加した一週間となった。
(1)27日(水)は、哲学者アラン・ルノー(Alain Renaut)の講演会。全然知らない名前だったが、じつは何冊も日本語訳がある大先生(パリ第4大学教授)で、今回は「応用哲学」に関する講演。こんなオカタイ内容で数百人集まるというのは、やっぱり「民度」の違いかねえ。講演終了後は「設定した課題に応えてないじゃないか」といった厳しい質問がフロア=一般市民からからとびかい、盛上った。やっぱスゲエな、この知的な体力は。
(2)28日(木)は、新進気鋭の政治社会学者フロランス・ジョシュア(Florence Joshua)が、左翼政党である「反資本主義新党(Nouveau Parti Anti-capitaliste)」の参与観察にもとづく博士論文の刊行版である『反資本主義者たち』(Anticapitalistes, Paris:La Decouverte, 2015)について語る講演会に参加。オーディエンスは30人程度だったが、パリ政治学院で博士号をとり、オクスフォードでポスドクをつとめた俊英が博士論文を語る一時間は、きわめて濃密なもの。しゃべるのが早くてついてゆくのに難儀したことはヒミツだが、やっぱ賢いやつは賢いのである。
(3)29日(金)は、現在フランス最高のイスラム政治学者といってよいジル・ケペル(Gilles Kepel)が、近著『フランスにおけるテロ』(Terreur dans l'Hexagone, Paris:Gallimard, 2015)にもとづき、最近のフランスにおけるイスラム教過激派のテロを分析する講演会。時流に沿ったテーマだけあり、地元選出の国会議員はじめ、立ち見続出の満員御礼となった。パリ政治学院教授であるケペルは、30年以上にわたり、社会学的手法にもとづいて「フランス人ムスリムによるテロの構造」を分析してきたが、今回の講演はその集大成ともいうべきもの。世代論、人的ネットワーク論、コミュニケーション論など、さまざまな論点が網羅されたじつに興味深いものだった。


来週は、中世史学者であるクリストフ・ピカール(Christophe Picard、パリ第1大学教授)による中世地中海史に関する講演会と、ジャーナリストであるジェラール・モルディア&ジェローム・プリウル(Gerard Mordillat and Jerome Prieur)によるキリスト教イスラム教の関係に関する講演会が予定されている。
前者の課題図書『カリフの海』(La mer des califes, Paril:Le Seuil, 2015)はすでに斜め(ここがポイント)よみきり、後者の課題図書『ムハンマドによるイエス』(Jesus selon Mahomet, Paris:Le Seuil, 2015)は現在絶賛斜め(ここもポイント)よみ中なり。
『反資本主義者たち』も『フランスにおけるテロ』も頑張って斜め(当然ここもポイント)よんでから講演会に参加したが、こういう機会でもないと手に取らないだろう本に目を通すのは、じつに「贅沢な」経験である。


それにしても、こんなに耳学問の機会が与えられているというのは……うーむ。
さすがにヨーロッパ最古の医学部の伝統を誇る町・モンペリエという「都市の文化度」の産物というべきか。
あるいはまた「文化による町おこし」というのは、ひとつの「あるべき」選択であるというべきか。

どうする、仙台?