フランス大統領選挙・左派予備選挙第二次投票

【訂正】
メランションとアモンの支持率の順番、逆だった。訂正。
【追記】
現在21時。予想どおり、約60%の得票率でアモンが勝利。さて、どうなる、大統領選挙?
ちなみに、われらが日本は?
【本題】
モンペリエに来て一週間、ということは、半分すぎてしまったということである。この間、リサーチについては「悲喜こもごも」が服をきて歩いているという感じで、資料に向き合う時間はほとんどないというありさま。あちらこちらで資料アクセス関係の交渉をしては、あまりの「これがフランスだ」ぶりに、疲れはててベッドに倒れ込むかヤケ酒を飲むかの二択というステキな日々を過ごしている。
オマケに宿のwifiがすさまじく遅く、かつてのダイヤルアップ時代を思いおこさせる状況。この宿は、wifi以外は文句ないのだが、wifiだけは、ひたすら切れたり、ひたすら故障したりと、良い思い出がない。今回は切れたり故障したりしないので、たぶんシステムを入替えたんだと思うが、その代償ということなのか、ステキに遅くなってしまったのである。なにしろ、添付ファイル付きのメールが落ちてこないんだからなあ……しかたなくフランス・テレコム(ブランドは「orange」)の有料wifiを入れる。一ケ月で4000円だから、仕方ないか。
さて、しごとの話は措いておき、今日はフランス大統領選挙・左派予備選挙の第二次投票(決選投票)である。イマイチ盛り上がりに欠けるのは、左派(=社会党+左翼急進党+エコロジスト)の支持率が伸び悩んでいるためで、本番で第二次投票=上位二人による決選投票に進むことは絶望視されている。支持率でいうと、一位がマリーヌ・ルペン国民戦線、極右、約25%)、二位がフランソワ・フィヨン共和党、右派、約25%)、三位がエマニュエル・マクロン(無所属、中道、約25%)、五位がジャンリュク・メランション(左翼党と共産党が合同した政治団体「断固たるフランス」、極左、約10%)、左派は四位(約15%)というのだから、気勢が上がらないこと甚だしいわけである。
このうち中道から左側をみると、マクロンは「規制緩和イノベーション、ちょっと社会民主主義」という、日本ではわりとなじみぶかい一昔前の民主党的な「アーバンでイケてる」スタンスで、個人的には「なんで今ごろ」感が強い。ごめんねエマニュエル、冷たくて。メランションは、クラシカルな「労働者保護、国家介入、財政出動、国際品愛用(トランプか?)」という旧型左翼路線で、これまた「なんで今ごろ」感はぬぐえないものの、それはそれで重要である。この両者に挟まれて苦労しているのが社会党系左派であるわけだが、予備選挙の決選投票に残ったのは、前首相マニュエル・ヴァルズと、元国民教育相ブノワ・アモン。
去る水曜日にテレビ討論があり、えんえん二時間みてしまった。
ヴァルズは、社会民主主義の立場から、「労働にもとづく社会(societe de travail)」の基本的な構造を維持するべきことを唱え、そのために社会保障制度を持続可能なものにする必要があると主張した。ま、これもよくあるパターンで、あまり面白みはない。
面白かったのはアモンで、公約の目玉は

ベーシック・インカム

の導入。ベーシック・インカムはフランス語では「revenue universel」になるが、ベーシック・インカムというと、大抵は「生存権」あたりから説きおこされ、そして「財源は?」というお決まりの批判にさらされるわけだが、アモンは一味違う。彼にとって、ベーシック・インカムは、

労働と収入を切り離す

手段なのだ。デジタル(人工知能、ロボット)革命が進めば、人間が担う労働は減少してゆく。そのような未来において、収入すなわち生存を労働にタグ付けしてしては、人間の生存そのものが脅かされてしまう。こんな事態を避ける手段(のひとつ)として採用されるのがベーシック・インカムであり、これは、まさにヴァルズが唱える「労働にもとづく社会」というスローガンに典型的に表現される「働いてナンボ」という近代の基本理念に対する根本的な挑戦のための手段である。さらにいえば、テレビ討論で「財源は?」と質問されたアモンは、「ベーシック・インカムは支出ではなく

未来への投資

であり、したがって財源なんて些末な問題にすぎない」と言切り、司会者やヴァルズを唖然とさせた。
じつは、第二次投票ではアモンが優勢だといわれており、ということは、ベーシック・インカムを前面に掲げて本戦を戦う候補者が登場するということになる。率直にいってアモンの政策は粗削りだし、実現可能性を問われると「ウーム」という気がしないでもない……というか、そんな気がする。たぶん、本番では、彼が勝つことは138%ないだろう。
しかし、デジタル革命という社会の根本的な変化を問題にし、それに対する抜本的な処方箋として「労働と収入の切断」というラディカルな(=根源的な)アイディアを提示するという知的営為は、尊敬に値する。


そんなことを考えつつ、せっかくなので、

予備選挙の投票を見にいった。

おお、政治意識高い系だなあ、自分。
宿の近くに投票所があったので、入り口にいたおじさんに「日本から来たので投票権(フランスの有権者名簿に掲載されている必要がある)ないんですが、関心あるので見てもいいですか?」と聞いたら、どうぞどうぞと招き入れられた。しばらく入口で見学したが、手作り感満載で、みんな楽しそうだったのが印象的だった。
世界各地で劣勢を強いられている左派は、その根本的な地点から再構築を迫られているのだろう。もちろん、一部地域では、すでにその芽が具体的な、つまりナショナルな政治のレベルで登場している。そして、バーニー・サンダースジェレミー・コービンに代表される「下からの路線(=虫の目)」と、アモンに体現される「上からの路線(=鳥の目)」がどう組み合わされるか、左派の将来はそこにかかっているように感じられる。
さて、そろそろ20時。あと一時間ほどで結果がわかる。