岡部造史『フランス第三共和政期の子どもと社会』(昭和堂、2017)


岡部さんとはじめてお会いしたのは、1997年に北海道大学で開かれた日本西洋史学会大会のときだったと思う。おお、すでに20年前か……まこと光陰矢の如し。ぼくの髪も減るわけである。同大会で岡部さんが報告することになり、ぼくが司会に指名されたのだった。
だが、しかし。
なにせあのころは、みんな若かった。
札幌滞在中は、ほとんど毎日午前様。それも4時とか5時とか「午前様」どころか「おはようございます」であり、たしか、日が昇って明るくなってからホテルに戻るタクシーを拾った気がする。おぼろげな記憶を辿ると、当時札幌に居を構えていた藤田苑子さんのお宅に二晩連続押しかけ、二日ともに「おはようございます」をかましたのではなかったか。あのときは、高澤紀恵さんとか、正本忍さんとか、フランス史若手研究者(当時)がオールキャストで藤田宅にそろっていたように思うが、すみません、それもこれもすべて藤田さんの人徳のなせる業です……って、いまごろ謝っても遅い。
そんなわけで、岡部さんとの初対面は、海よりも深い二日酔いのなかでなされたのであった。申訳ない……って、いまごろ謝っても(略)。
なにやってたんだか、自分。
その後、岡部さんはリールに留学し、児童政策を「統治権力」との関係という観点から捉えるという着想を得、帰国してから着々と仕事をつみかさねた。その努力の結晶が本書であり、リールが位置するノール県文書館やトルコワン市文書館に所収されている一次資料にもとづいて、手堅いアーギュメントが展開されてゆく。淡々とした筆致ながら実証的な歴史研究の面白さをじわじわと感じさせてくれる一冊を読む、好天の仙台。