日本西洋史学会報告①

先週末(5月20-21日)は「<日本西洋史学>界、年に一度の大同窓<会>」の略語と化しつつある日本西洋史学会が一橋大学で開催され、20日(土)午後の公開講演(藤田幸一郎さんと見市雅俊さん)と21日(日)午前の部会別自由論題報告(個人発表)を聞いてきた。その間に3回のアルコール摂取機会、すなわち

  • 19日(金)夜:新宿の焼き鳥屋で、編訳書『歴史学の最前線』刊行の打上げ、
  • 20日(土)昼:国立のフレンチで、共著『世界史/いま、ここから』刊行の打上げ、
  • 同日夜:中野の地中海料理カルタゴ(十数年ぶり!!)で、大学入試センター試験作題部会の同窓会、

があり、21日(日)に至っていいかげんヘロヘロしてきたので、同日午後のパネルは失礼して仙台に逃げ帰った、という次第である。亜熱帯らしく暑かったし、ヒト大杉栄だったし、東京。
しかし、せっかくなので、ぼくが聞いた自由論題報告5本について、簡単に紹介およびコメントしておきたい。

  • 第1試合

東風谷太一「ビールに憑かれた人びと―19世紀前半期ミュンヒェンにおける都市・ビール・騒擾―」
なかなかステキなメインタイトルなので(ひさびさのキワモノかと)期待していたが、良い意味で大いに裏切られた。
1844年バイエルンミュンヘンにおけるビール騒擾について、モラル・エコノミー論、ソシアビリテ論、法意識研究などを組合せてツールとして使用しながら分析し、当時の都市民衆とりわけ職人たち旧中間層のあいだには大略「ビールを飲むことは職人共同体メンバーの(これまでしばしば言われているような権利ではなく)義務であり、その義務を履行できるようにすることが慣習法的な正義であり、その正義を妨げる価格でビールを販売することは不正である」という観念が共有されていたという、じつに興味深い結論を導出している。
各地の国家文書館、バイエルン州文書館の所蔵資料、当時の刊行物など、利用したソースの質・量もほぼ十分な水準に達していると思われる……が、ぼくはドイツ史プロパーではないので、これは単なる推測。
終了後に(同様なテーマをプロイセンにおけるパンについて分析してきた先達たる)山根徹也くんに聞いたら、東風谷さんは長期の留学経験がないはずだということで、それでこれだけのアーギュメントを構築できたのであれば、今後が楽しみだ。若干論理にアクロバティックなところがあり、かつ、その点に関するソースの裏づけが弱い(この点は報告後の質疑応答で指摘されていた)という問題はあるが、若き研究者のしごとは、これは面白ければよいのである、というのはさすがに暴論かもしれないが、良いものを聞かせてもらった。