アーカイヴァル・ワークとはなにか(2)。

【追記】

ぜんぜん話は違うが、エロー県文書館からの帰り道に、日本でもフランチャイズチェーン展開して有名になったパン屋であるポール(Paul)があり、そこでパンを買って帰るのを日課にしているが、なんか不味くなってないか、ポールのバゲット? スカスカのフカフカになっていて、かつての「カリッ、パリッ」感が消えてしまったと感じるのは、ぼくだけだろうか。そういえばCDG国鉄駅の上にあったポールも、いつの間にか別のチェーン店である「ブリオッシュ・ドレ」にかわっていたし、大丈夫か、ポール?

【本文】

フランスの地方(県、市町村)文書館におけるアーカイヴァル・ワークについて、もうちょっと書いてみたい。こんなマイナーなテーマに関心があるひとは、ごく一握りにすぎないと思うが、とりあえず備忘録がわりである。

フランスの地方文書館で重要なのは、なによりもまず「ひとをみる眼」である。ここでいう「ひと」とは文書館の職員さんのことだが、だれと仕事をするかによって、アーカイヴァル・ワークの効率と、そしてしごとの「楽しさ」は、格段にかわってくる。地方文書館職員のしごとは、とにかく属人的な裁量が大きいからだ。

たとえば、親切な職員さんであれば、ぼくみたいなアジアンが「地球の裏側から来ました、あまり滞在時間がないんです」といえば、おおっという感じで「一日あたり閲覧可能箱数上限(英語でコータス、フランス語でコートゥス)をこえられるよう取り計らってあげようか」といったありがたい申出をしてくれるかもしれない。最近は地方文書館もかなり機械化され、上限をこえると閲覧申請用マシンのディスプレイに無情な「上限をこえました。請求不可能です」サインが出るものだが、職員さんは制限解除権限をもっているので、お願いできれば一発でオッケーである。ただし、この場合、出納業務(肉体労働)が増えることになるので、ひたすら頭を下げまくるか、可能であれば差入れをすることが望ましい。

今日も、ぼくがみている「エロー県公共低廉住宅公社理事会会議関連資料」担当の職員さんが、今回閲覧を予定している115箱の現状(どこにどれくらいの箱があって……とか)と、今後の閲覧請求の方法について、色々と説明に来てくれた。こういう情報がないと、閲覧申請用マシンの前で「あれ、請求できないぞ、なぜだ」などという羽目に陥ってオロオロしてしまうのがおちである。

さて、ぼくの個人的な経験からすると、こういった親切さ……というか臨機応変さを発揮してくれるのは、まずはお兄さん(若い男性)、ついでおじさん(若くない男性)とお姉さん(若い女性)、そして最悪なのがおばさん(若くない女性)である。なんでこんな順番になるのか理由はわからないが、大抵はこの順番である。ウーム、不思議だ。

今日も、午前中の出納カウンター担当者のひとりがこの手のおばさんで、ぼくが請求する重い箱をもつのがメンドイらしく、挨拶しても「メルシー」といっても反応レスだった。寂しいなあ、ぼく。

「だれと仕事をするか」が重要だというのは、そういう意味である。ぼくは性差別手記者ではないつもりだが、とくに面倒な=例外的な=裁量が必要な取り扱いをお願いしたいときは、出納カウンターにだれがいるかチェックしてから行動に移るようにしている。おばさんだったらちょっと待ち、お兄さん(か、ダメだったら、おじさんまたはお姉さん)が登場したら立ち上がる。おばさんがいても無視し、お兄さん(か、ダメだったら、おじさんまたはお姉さん)にむかって突進し、ホントに申訳ないという感情を全身から発散させつつ(自社比)「すみませんが……」と切り出すのである。

とにもかくにも、こうして、めざす資料が入った箱を手にし、閲覧席に戻る。ホントのアーカイヴァル・ワークは、ここから始まるのだが、その話はまたあとで。