アーカイヴァル・ワークとはなにか(4)。

【2月16日追記】

ちょっと請求番号の記述が混乱していたので、修正した。

【本文】

すこし具体的な話で考えてみよう。

いま、ぼくは、戦後モンペリエの都市計画・都市化の歴史を調べている。もうちょっと詳しくいうと、1960年代からおもに市の北西部に拓かれはじめた民営・公営の団地が、その後、マグレブ北アフリカ)移民の集住によって(なぜか)「アブナイ地区」とみなされ、都市再開発政策/事業の対象になるプロセスとメカニズムを分析している。

「そんなことを細かなことをニッポンジンが調べて、なんになるんかいね」といわれるかもしれないが、これが面白いからどうしようもない……というか、面白ければよいのである。

ま、もちろんこれは動機の半分で、残り半分は、日本でも、少子高齢化の進展と、ありうる政策的選択肢としての移民の増加によって、各地の大規模な団地(多摩ニュータウンとか、千里ニュータウンとか)はどうなってゆくのか、ヘタを打つと「アブナイ地区」とみなされてゆくのではないか、その場合に採用されるべき都市再開発政策はいかなるものであるべきか……といった問題関心に基づいている。

そんななかで、とくにぼくの関心をひいたのが、1960年代初めにアルジェリアからの引揚者(ピエ・ノワール)に住居を提供するために建設された民営団地プティ・バール(Le Petit Bard)と公営団地ラ・ペルゴラ(La Pergola)だった。

両者は道を一本隔てたところにあり、

(1)ほぼ同じ時期に、ほぼ同じ目的のために建設された、という共通点。

(2)前者は民営、後者は(エロー県公共低廉住宅公社[OPHLMDH]が建設・管理するという)公営であり、21世紀に入ると、前者は「アブナイ地区」とみなされてゆくのに対して、後者は、1991年に大規模な改築・改装をしていたおかげで、さほど問題なく今日に至っている、という相違点。

を、ともに持っている。

このうちプティ・バールについては、すでに活字に出来た(Naoki Odanaka, "Cinquante ans d'un quartier montpellierain: Le Petit Bard, 1960-2010," Bulletin Historique de la Ville de Montpellier 38, 2016)ので、いまは後者、つまりラ・ペルゴラの歴史を追っている。もちろん、プティ・バールの歴史との比較を念頭においていることはいうまでもあるまい。

ちなみに、現在のラ・ペルゴラは、こんな感じ。近くにトラムの駅もでき、それなりの雰囲気でないかえ。

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さて、ラ・ペルゴラの歴史にアプローチする際に利用しうる主要な資料としては、

(1)「アブナイ地区」再開発事業は1980年代から始まるが、事業主体は市町村なので、これら事業に関する資料は、モンペリエの場合は、モンペリエ市文書館に所蔵されている。ラ・ペルゴラについても、再開発事業の対象とするべきか否かをはじめとする議論の対象となったこともあり、一定の資料が残っている。そんなわけで、これらを対象とするアーカイヴァル・ワークを進め、あと20箱程度というところまで来ていたのだが、資料保管庫にアスベストがみつかり、2015年12月からアクセスできなくなって、今日に至る。つまりデッド・エンド状態。

(2)建設・管理の主体であるOPHLMDHは、当然ながらラ・ペルゴラに関する大量の資料を所蔵している。OPHLMDHはのちに「エロー・アビタ」と改称されて今日に至るが、日本でいうと地方自治体(この場合はエロー県)の外郭団体にあたり、資料は独自に保管している。外郭団体所蔵資料については、アクセスはなかなか大変なのが通例だが、エロー・アビタについては、さいわいなことに、本部改築にともない、2016年末、2006年までの資料がエロー県文書館に移管された。そのなかで、ぼくにとって重要なのは

 -ラ・ペルゴラに関する一件書類:約30箱(これが一番大切)

 -エロー・アビタ理事会の議事録と理事会会議関連文書:約200箱

 -会計資料:約30箱

の3つである。これら箱の各々に、請求番号(フランス語でコート)が付けられている。

地方文書館の場合、請求番号は、

  -どんな歴史的性格をもっているかを記すアルファベット、

  -どんな具体的性格をもった文書群として文書館に預託されたかをあらわす数字番号、

  -そして個々の箱を表す数字、

という3つの部分からなっている。なお、このうち最初のものを資料系列(英語でシリーズ、フランス語でセリー)と呼び、前二者を合わせて下位資料系列(英語でサブシリーズ、フランス語でス・セリー)と呼ぶ。そして、三者を合わせると請求番号になる。

たとえばエロー県文書館で「2496W169」という請求番号で表現される箱は、目録をチェックする(ことは、じつは2496Wという下位資料系列は目録が未公表なので不可能なのだが、職員さんがもっている非公式目録をみせてもらう)と

-W:新しい資料(資料館によって異なるが、だいたい戦後のもの)

-2496:エロー県公共低廉住宅公社理事会会議関連資料

-169:1994年の同資料

を含んでいることが判明する。つまり、この箱には「エロー県公共低廉住宅公社(OPHLMDH)理事会会議資料、1994年」といったタイトルがついていることになるわけだ。

そんなわけで、いまは、ひたすら、これら箱を開けてはチェックしている、というわけである。ヘロヘロと、だが。